2017年10月11日水曜日

第61話 HCUより「秋といえば」

こんにちは!HCU(High care unit =高度治療室)のリクルーター委員です。
日中はまだまだ暖かですが、朝夕めっきり寒くなりましたね。秋真っ盛りです。
秋といえば読書!
私は雑食に色々な本を読みますが、皆さんはどんな本を読まれますか?医療に携わる者として多少の興味がわくジャンルといえば医療もの。
とくにドクターが書いた医療ものは一度くらい読んでみようという気になったことがあると思います。
ドクター作家といえば森鴎外や渡辺淳一、最近ではドラマ・映画にもなった『チームバチスタシリーズ』を書いた海堂尊が有名ですね。
個人的にはドラマ『無痛』の作者である久坂部羊がとても好きです。

久坂部羊のデビュー作は『廃用身』。
脳梗塞の後遺症や寝たきりで動かせなくなった四肢を切断し、褥瘡リスクの軽減、介護負担の軽減を図った結果、血液が内臓器や脳に充分いきわたるようになり認知症が改善。
これは良い医療だということで率先的に人々は動かない四肢を切断していく。だがその治療を発案した医師にとある疑惑が浮上し、肯定的だった世論は一気に逆風に。そんななか、自分で希望し、ほとんどの四肢を切断した男性患者が一家惨殺事件を起こす。患者はどうやって家族を殺したのか。そして、『なぜ』殺したのか。…という内容です。
当然フィクションなのですが、あたかもノンフィクションであるかのような錯覚に陥る工夫がされていて緊張感を煽ります。
ストーリーとして面白いだけでなく、現代社会や人間がリアルに描かれ、医療の現場を中心に深く重く絡みついてくる倫理に、読後、呼吸を忘れ呆然としてしまう衝撃の作品でした。

文章というのは書いた人間の中身が克明に可視化され人に伝わる媒体ですね。
久坂部羊に会ったことはなくとも、彼がどういう姿勢で生きているのか感じることができます。
休みはとれなくても仕方ない。睡眠は少なくても仕方ない。一生懸命やっても報われないことが多い。心を尽くしても結果が出なければ敵とばかりに責められる。そんな医療の現場に立ってこそ抱く『思い』。「医療とは」「患者とは」「人とは」
あの読後感の素晴らしさは、久坂部羊という人間の「考え方の一貫性」の賜物のような気がします。
そこがブレると受け取り手は、物語はおろか、作家ですら信用できなくなる。

さて、当院のホームページに、循環器内科部長・研修医・看護部長の「ブログ」という文章を掲載しています。賢い事をこむずかしく語るのではなく、日々の学びや気づきがユーモアたっぷりに綴られています。ぜひ時間があるときに巡ってみてください。
その文章から、当院で働く人々の人となりや職場の雰囲気を少しでも感じて頂けたらと思います。

当院の病院理念「患者様本位に徹しよう」を題名に物語を綴るとしたら、どんな内容になるだろう。
『ツカザキ病院』という組織の考え方は、姿勢は、一貫しているだろうか。
「医療とは」「患者とは」「人とは」。
そこがブレると受け取り手は、病院はおろか、医療ですら信用できなくなる。

背筋を伸ばし、顔をあげ、前を向き、そして、ふりかえる。

そんな意識を育てる秋の読書を、ぜひみなさんも楽しんでみてはいかがでしょう。